増資が完了したら、株価はどうなる?
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増資の発表があると、株価は下がる事が多い。
バイオベンチャーは、毎年のように数十億円の開発資金を増資で調達しているが、そのたびに株価はガクンと下がる。
これは、増資によって株数が増えるが、企業の利益は急には増えないため、相対的に一株当たりの利益が下がってしまうからだ。
これが「株式の希薄化」と呼ばれる現象で、一株当たりの利益が減るとPER(Price Earnings Ratio:株価収益率)が下がってしまい、現在の株価が「割高」になってしまうからだ。
第三者割当増資では、株価が上がらない
増資というと、既存の株主に予約権を割り当てたり、新規に募集したりすることもあるが、バイオ株の場合、資金調達は第三者割当増資で行うことが多い。
これは新株予約権(新株を買う権利)を、特定のファンド会社や証券会社に割り当てるというやり方だ。
第三者割当増資を行った場合、株価は上がる場合も下がる場合もある。
と言うのもバイオ関連株の場合、もともと赤字を垂れ流し続けていてPERがゼロで、株式の希薄化が起こっても一株当たりの利益は相変わらずゼロだからだ。
なので、つぶれかけ企業のボロ株の場合は、増資で資金を調達できれば、延命できるから、逆に株価は上がったりする。
第三者割当増資を引き受けたファンドや証券会社は、それなりに儲かる新規事業があると考えて引き受けているため、「近々なにか好材料が出るかも!」という思惑から、急騰したりもする。
ただ、急騰したあとの株価は、やはり冴えない。
というのも新株予約権を買ったファンドや証券会社は、それを少しずつ株券に替えて市場で売りさばくからだ。
例えば、新株を一株当たり200円で買う権利を買ったファンドは、株価が230円くらいになると、予約権の行使を行い、株を200円で買って230円で売って儲ける。
そして後日また、その金でまた新株を200円で買って、市場で230円くらいで売って儲ける。
これを繰り返して数百万株や数千万株を市場で売りさばくわけだ。
なので少し株価が上がれば、新株予約権が行使されて売りが後から後から湧いて出て、株価が上がらなくなる。
新株予約権 権利行使が完了したら、株価はどうなる?
では、この第三者割当増資の権利行使執行が完了したら、株価はどうなるか。
まず、新株予約権の権利行使状況は、大量行使があった週末や、月末に発表される事が多い。
「今週、これこれの権利行使が行われました」
「月末時点での予約権の残りは●●万株です」
みたいな報告がEDINET(エディネット)にアップされる。
なので、新株予約権の権利行使がどの程度進んでいるかは、だいたい分かるし、そろそろ権利行使が完了しそうだと言うこともわかる。
そうなると、売られる予定の新株数も減ってくるわけだから、株価の上昇を抑える力も衰えてくるため、株価がジワジワ上がり始めたりする。
そして急騰し始めるケースもある。
例えばバイオ関連銘柄のリボミックの場合、こんな感じで大量の権利行使が突然材料視されて急騰し始めた。
新株予約権 大量権利行使で急騰したリボミックの例
この急騰は、大量権利行使と言うだけでは無く、別の好材料や思惑もあったのだが、大量権利行使があったというのが一つのキッカケになった。
新株予約権の権利行使が進む前に株価が上昇
権利行使完了間近になると、株価がドンドン上がっていった場合、完了のIRが出た途端、売り一辺倒になる場合もある。
いわゆる「材料出尽くし」のパターンだが、バイオ株の場合、次の「お知らせ」が出ることも予想されるし。
例えば、以前こういう感じのことがあった
第10回 新株予約権 権利行使完了のお知らせ
と共に、
第11回 新株発行のお知らせ
が出たと言うことがあった。
バイオ株の場合、開発費が毎年数十億円かかってしまうため、新株予約権の行使完了したからといって、手放しでは喜べない。
完了と同時に次の増資発表が来るケースはさすがに少ないが、数ヶ月後に、また新しいお知らせが来る場合は毎年のようにあるね。
大量行使が発表されあと、急騰して急落した例
リボミックの場合、大量権利行使のニュースのあと急騰したため、そのあとの権利行使もどんどん進んだが、株価はやっぱり下がってしまった。
しかし新株700万株のうち400万株が、たった一ヶ月の間に権利行使完了してしまったので、これは凄いペースだ。
依然、毎日物凄い株数の売買が続いているので、恐らく残りもあっと言う間に行使完了してしまいそう。
そうなったあとに、株価がどうなるかは見物だね。