バフェットは、なぜ商社株を買い集めているのか?
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2020年9月1日、衝撃的なニュースが株式市場に飛び込んだ。
あのバフェット氏が率いる投資ファンド「バークシャー・ハサウエイ社」が、日本の五大商社株を5%取得していたことが、明らかになったのだ。
「5%ルール」というのは、企業の株を5%以上保有した場合は、一週間以内に財務局に報告して公表する義務のことで、8月下旬に保有株の総数が5%を越えたらしい。
そのお蔭で、一日の商社株は軒並み10%も上昇するという、特大フィーバー状態となった。
五大商社株なんて、そんなに急に騰がるもんじゃないから、ビックリだね。
でもなぜ今、商社株なのか?
商社株はオワコン銘柄だったはずだが?
ハサウエイ社やウォーレン・バフェット氏の言によると、商社株を買い集め始めたのは一年くらい前からだという。
そしてコロナショックが全世界の株式市場を襲い、日経平均株価がドーンと下がって1万8,000円くらいになった前後で、大きく株数を増やしたということらしい。
バークシャー・ハサウエイ社は、日本円で社債を発行していて、それで集めた6,000億円を、五大商社株取得に充てたというから、借金してまで投資したらしい。
同社では、今後も最大9.9%まで商社株を買い集める可能性があるとして、これで商社株は底堅い銘柄となった。
しかしなぜ今、商社株なのか?
商社株というと、どちらかというとオワコン(終わったコンテンツ)という風に見られていた。
それだけに、アメリカの著名投資家であるウォーレン・バフェット氏が、なぜ商社株に目を付けたのか。
しかも特定の商社ではなく、日本の五大商社と呼ばれる「伊藤忠、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅」の株を均等に5%ずつ買ったのか。
バフェット氏らのグループは、「日本の商社は世界中で(現地企業との)合弁会社を設立しており、将来性が見込める」としている。
この当たりに、商社株の将来性をみたらしい。
五大商社は、投資会社になった?
日本の五大商社は、世界中で合弁会社を設立してビジネスを行っている。
それがバフェット氏らによる商社の最大の評価らしい。
こういう著名投資家は、動かしている資金が数兆円にも上るので、将来性が見込めない株は買わない。
しかし日本の五大商社と言えば、もう百年近い歴史を持つ古い企業で、これからグングン伸びるとも思えないのだが。
ただ、言われてみれば、確かに五大商社は世界でビジネスを行っている。
たとえば伊藤忠商事は中国でのビジネスに強みはあるし、民主党政権時には、伊藤忠OGが中国大使を務めたりもしていた。
ソレイジア・ファーマが上場して急騰し、人気銘柄になった背景には、ソレイジア株を伊藤忠商事が持っていて、中国ビジネスに期待できるということだった。
五大商社というのは元々、日本の高度経済発展期、つまり1970年代に大成長した企業だ。
当時は日本の工業が飛躍的に発展し、世界中に製品を売りまくっていた。
しかし日本国内には資源がないため、世界中から原材料を調達して来なければならなかった。
そこで海外事情に長けた商社が、資源国の政府や企業と交渉して原材料や物資を買い付け、それを日本のメーカーに売るというのがビジネスモデルだった。
三菱商事は「ラーメンから航空機まで」を扱うと言われるくらいの手広さで、農産物からエネルギー、鉄鉱石や石炭といったモノを輸入したり、輸入を仲介していた。
だから日本の輸出企業にとっては、なくてはならないのが商社だったわけだ。
しかし日本企業の成長が止まり、商社の仲卸的なビジネスは伸び代がなくなった。
そこで伸び代のある海外ビジネスに目を付け、世界中で合弁会社を作って投資を始めたのが五大商社だということだ。
果たしてバフェットの見込みは正しいのかどうか?
といってもバークシャー・ハサウエイ社は、損はしていないから成功だろう。
1%台の金利で資金を調達して、投資利回り3%くらいの株を買ったわけだから、差額の2%くらいの利益は儲かるし、すでに購入した平均株価より何割も株価は上がってるだろうから、数百億円くらいの含み益が出てるはずだけど。